名前は同じ、でも中身は別物!タイとラオスの「カオソーイ」徹底解剖

タイのカオソーイの写真 アジア
タイのカオソーイ©2026 imadoko-imakoko.com

※本記事の写真はすべて筆者が現地で撮影したものです

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タイとラオス、この両国で「同じ名前なのに中身が全く違う料理」の筆頭が「カオソーイ」です。

チェンマイで食べたあのクリーミーなカレー麺を想像してルアンパバーンで注文すると、出てきた料理を見て「あれ?注文間違えた?」と驚くと思います。今回は、タイとラオスそれぞれでカオソーイの「定義・構造・味」を徹底的に比較検証します。

ルアンパバーンで麺の食べ比べの記事もあります。

そもそも「カオソーイ」の定義とは?

比較の前に、言葉のルーツを整理しましょう。「カオソーイ」という名前には、実は明確な定義があります。

  • カオ(Khao): 米、あるいは食べ物
  • ソーイ(Soi): 細く切る、刻む

つまり、本来の定義は「(生地を)細く切り分けて作った麺料理」のことです。※1

ラオスでは今もその製法に忠実で、蒸した米粉の生地をナイフで切る「切り麺」そのものをアイデンティティとしています。ルアンパバーン王室の元料理長によるレシピ集でもラオスにおけるカオソーイを「切り麺」として紹介されていました。※2 そして味付けも地域伝統の「トゥアナオ(発酵大豆)」を活かす方向に進化しました。※3

対してタイでは、交易ルート(中国南部からビルマやタイ北部)の変遷の中で米の麺から小麦麺への置き換わりが発生しました。さらに、もともとはココナッツミルクを使わないスープでしたが、タイ中部のココナッツ文化と融合して変化が起こり、「ココナッツ風味のカレースープの麺料理」というフレーバーの仕様が現在の定義として定着したとされています。※4

  • ※1 Austin Bush, “The Food of Northern Thailand” (2018)
  • ※2 Phia Sing, “Traditional Recipes of Laos” (1981)
  • ※3 Penny Van Esterik, “Food Culture in Southeast Asia” (2008)
  • ※4 David Thompson, “Thai Food” (2002)

チベットの肉味噌麺。それほど辛くはなく、甘みもあります(中国・チベット自治区)

チベットで食べた混ぜ麺料理の写真

中国南部、広州の肉味噌混ぜ麺。小麦の感じが強くスパイシーです(中国・広州)

中国の広州で食べた肉味噌混ぜ麺の写真

こういった料理が中国からラオス、タイと南下していく過程で変わっていきます。いよいよ個別に分析していきます。

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タイのカオソーイ(Northern Thai Style)

【仕様:濃厚・クリーミー・複雑なスパイス】

チェンマイを中心とするタイ北部のカオソーイは、中国系ムスリム(ホー族)の食文化が独自に進化した「ハイブリッド型」です。

オーソドックスなカオソーイ(タイ・チェンマイ)

タイのチェンマイで食べたタイのカオソーイの写真

麺と調理法

  • 小麦の卵麺(バミー): 黄色い中太麺を使用。最大の特徴は、茹でた麺の上に「揚げた麺」をトッピングする二段構え。
  • ココナッツカレー: レッドカレーペーストをベースに、イエローカレー粉やスパイスを加え、ココナッツミルクで煮込んだ濃厚なスープ。

揚げ麺のボリュームがあるカオソーイ(タイ・チェンマイ)

タイのチェンマイで食べたタイのカオソーイで揚げ麺のボリュームが多い写真

具材と食べ方

  • ホロホロに煮込まれた鶏モモ肉や手羽元がメイン。
  • 高菜の漬物、エシャロット、ライムを自分で投入し、重厚なスープに酸味と食感のアクセントを加えて完成させます。

鶏のもも肉が入ったカオソーイ(タイ・スコータイ)

タイのスコータイで食べたタイのカオソーイで鶏肉が分かりやすい写真
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ラオスのカオソーイ(Luang Prabang Style)

【仕様:滋味深い出汁・発酵のコク・生ハーブ】

ルアンパバーンのカオソーイにはココナッツミルクもカレー粉も入りません。一見、担々麺のような見た目ですが、味の決め手は「和」にも通じる発酵の力です。

発酵味噌の感じがわかるカオソーイ(ラオス・ルアンパバーン)

ラオスのルアンパバーンで食べたラオスのカオソーイの写真

麺と調理法

  • 平打ちの米麺: 蒸した生地を切って作る、つるつるとした喉越しの良い広幅のライスヌードル。
  • クリアな豚スープ: 豚骨から取った透き通ったあっさりスープがベース。
  • 肉味噌(ドイ): 挽肉、トマト、唐辛子、そしてトゥアナオ(ラオス風納豆)を煮込んだ「特製肉味噌」を最後にのせます。

平打ち麺が分かりやすいカオソーイ(ラオス・ルアンパバーン)

ラオスのルアンパバーンで食べたラオスのカオソーイの写真で平打ち麺が分かりやすい

具材と食べ方

  • どんぶりが見えなくなるほどの「山盛り生野菜とハーブ」が別皿で提供されます。
  • ミントやパクチー、バジルをちぎってスープに沈め、肉味噌を溶かしながら食べ進めるのが正解です。

カオソーイには野菜やハーブがついてきます(ラオス・ルアンパバーン)

ラオスのルアンパバーンで食べたラオスのカオソーイで付け合せについてくる野菜やハーブが分かる写真
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徹底比較スペック表

両者の違いを表にまとめました。

項目タイ(Northern Thai)ラオス(Luang Prabang)
スープの性質ココナッツカレー(濃厚)クリアな豚出汁(あっさり)
味の核スパイス & 甘み発酵大豆(肉味噌) & 旨味
麺の素材小麦(卵麺)米(ライスヌードル)
必須要素揚げ麺のトッピングによる「多層構造」大量のフレッシュハーブを追加し、肉味噌を溶かす「単層からの変化」
ルーツ中国系ムスリムの影響伝統的なラオスの切り麺

米の麺、肉味噌、ハーブがラオスのカオソーイ(ラオス・ルアンパバーン)

ラオスのルアンパバーンで食べたラオスのカオソーイの写真で特徴を分かりやすくあらわしている

汁なしバージョンのタイのカオソーイ(タイ・チェンマイ)

タイのチェンマイで食べたタイの汁なしカオソーイの写真
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タイとラオス以外にはないの?

タイのカオソーイに近い料理

カレー味(ココナッツ風味)のスープ麺やスパイス強めのスープ麺はインドネシアなどにもありますし、東南アジアだと見かけます。またカレー風味ではないですが、タイのカオソーイの原点のような麺料理はミャンマーの混ぜ麺であります。

  • 混ぜる内容: イエロー・ミー(小麦の卵麺)+ ビーフン(細い米粉麺)。
  • 特徴: 太さと食感の違う2種類の麺が入ってきます。店に他の種類があれば3種類のミックスも可能です。
  • 理由: 歯ごたえのある卵麺と、スープをよく吸うビーフンを同時に食べることで、食感と出汁の味を同時に味わうことが出来るようになるからではないかと思います。

カレーテイストの麺料理(インドネシア・ジョグジャカルタ)

インドネシア、ジョグジャカルタで食べたカレー味の麺料理の写真

極太麺のスパイシーな麺料理(中国・西寧)

中国の西寧で食べた極太麺料理の写真

これと非常に似ているビジュアルの麺料理がラオスにもあります(ラオス・シェンクアーン)

ラオス・シェンクアーンで食べた極太麺料理の写真

他にカレー味で2種類の麺が混ざっている料理としては、マレーシア、シンガポールで食べられている「カリー・ミー(Curry Mee)」というカレー麺があります。

カリーミィーには2種類の麺が入っています(ブルネイ・バンダルスリブガワン)

ブルネイのバンダル・スリ・ブガワンで食べたカリーミィーの写真

カオソーイに最も近い存在ですが、こちらは「揚げ麺」ではなく、「種類の違うソフト麺」を2種類混ぜるのが一般的です。

日本のスパイスラーメンもタイのカオソーイに近いと言えば近いです(日本・東京)

日本のスパイスラーメン卍力の写真
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ラオスのカオソーイに近い料理

肉味噌を混ぜて食べるという意味では、これはおそらくたくさんあります。

中国の四川料理だと肉味噌の(激辛)混ぜ麺もありますし、日本でも一般的ですが、担担麺もここに分類されると思います。

激辛肉味噌混ぜ麺。とても辛いので少しづつ混ぜます。(中国・チベット自治区)

中国のチベット自治区で食べた激辛の肉味噌混ぜ麺の写真

他に中国や韓国でのジャージャー麺やビビン麺もあります。スパイシーさよりは甘じょっぱいテイストですが、肉味噌と言えます。

韓国のビビン麺(韓国・ソウル)

韓国のソウルで食べた混ぜ麺(ビビン麺)の写真

プサン名物のミルミョン(冷麺)(韓国・釜山)

韓国の釜山名物のミルミョン(冷麺)の写真

肉味噌に関しても、乗っているパターンだけでなく、インドネシアでは別盛り方式もありました(インドネシア・スラバヤ)

インドネシアのスラバヤで食べた肉味噌が別盛りの麺料理の写真

また日本で独自の進化を遂げている、汁なし担担麺や台湾混ぜそばもここに含まれると思います。

日本の四川料理店で食べた汁なし担担麺。麺の下にも辛味噌が入っています(日本・東京)

日本の東京で食べた汁なし担担麺の写真
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まとめ:結局、どっちが正解?

結論から言えば「どちらも正解で、どちらも最高」です。

  • タイのカオソーイ: スパイスの刺激とココナッツの甘みを堪能したい、ガッツリ派に。
  • ラオスのカオソーイ: トマトと発酵大豆の深いコク、野菜のヘルシーさを楽しみたい、滋味重視派に。

同じ名前を冠しながら、一方は「スパイスによる進化」を、もう一方は「伝統的な製法と素材」を守り抜いた。この違いこそが、旅先で麺を啜る醍醐味と言えるでしょう。

ルアンパバーンを訪れた際は、「これ、タイのと違う!」という驚きをぜひ楽しんでみてください。きっと、その真っ赤な肉味噌の虜になるはずです。

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